碧井 ゆきの物語

こんにちは。碧井ゆきと申します。ここにはわたしが書いた小説をのせています。

2016-09-07から1日間の記事一覧

これから j

「お待たせしました」 明人は、ビルの外壁に寄り添うようにして立っているOL風の制服姿の女性に声をかける。 「いいえ、待っていませんけど」 女性は訝しげに明人の顔を見る。 「僕のような人を待っていませんでしたか」 「僕のような人って?」 「例えば、…

これから i

混乱している。 考えたくないことを考えなければいけないからだ。 降りてきたら何か言わなければ。 美咲は椅子を立つ。 お金をかけたくないわけではない、ということは。 美咲は膝から崩れ落ちそうになる。 どうしようもないことを責められても仕方がない。 …

これから h

公数は青菜の煮びたしをつついている。 葉の一枚を箸先でつまむと葉がびろっと伸びる。 葉をまとめて出汁につければおいしいものを、伸びてたれ下がったままの状態で口を横から持っていき、食べる。 あまりおいしそうに食べているようには見えない。 香子は…

これから g

ときどき、不安になる。 清星と始まったときは、代わりに過ぎないのだからと、考えが浅かった。 今にして思えばなのだけれど。 知世子さんの体が良くなれば、終わってしまうのだろうか。 治療の甲斐がなく亡くなってしまったら、清星は瑠璃とずっと今までの…