碧井 ゆきの物語

こんにちは。碧井ゆきと申します。ここにはわたしが書いた小説をのせています。

2016-10-27から1日間の記事一覧

出ないための鍵 8

玄関のタイル敷きの土間にはバケツが置いてあり、濡れぞうきんがかけられていた。 チワワは彼女にあしを拭いてもらい、玄関の床に下ろされると、廊下の右側のドアの開いた部屋へ小さなあしを動かし入っていった。 彼女は同じぞうきんで自分の泥だらけになっ…

出ないための鍵 7

家の前に着き軒下に入ると、僕は彼女の傘を受け取りたたんだ。 彼女は玄関ドアのノブをおもむろに手前に引いた。 ドアは開かなくて、彼女の体がガクンと揺れる。 彼女はチャイムのボタンを押す。 何も反応がない。 「こんな雨なのに、タエコさん、出かけたの…