碧井 ゆきの物語

こんにちは。碧井ゆきと申します。ここにはわたしが書いた小説をのせています。

2016-11-03から1日間の記事一覧

出ないための鍵 14

「お父さんはほとんど居ないのに?」 僕は素朴な質問をした。 「ええ」 彼女は外を見たままだ。 チワワが彼女の正座した脚にお尻をつけて横になる。 「あなたの部屋は」 「1階です」 前に来たときの、食事がのせられているお盆が廊下の床に置かれていたのを…

出ないための鍵 13

リビングに、ドライヤーの風の吹き出る音と、彼女の嗚咽、何度もの鼻をかむ音が響く。 彼女を見上げていたチワワは、彼女のかたわらでふせをしてじっとする。 泣くことが必要なんだな。 視界の中に彼女を置いて乾かす。 片方の裾がほとんど乾き、彼女が水気…