碧井 ゆきの物語

こんにちは。碧井ゆきと申します。ここにはわたしが書いた小説をのせています。

果たし状1

駅のホームに停まった電車から大勢の人が降りる。私もあの中に入るんだな。この春大学院を卒業する愛会梨はほおづえをついて眺める。要らないものはだいぶ処分した。その日が来れば否応なく手元にある物は持っていくことになる。実家に押し付けてもいいが、親にだって見せたくないものはある。

果たし状。無論ジョークなのだ。夜唯子とはこの中に書かれていることを果たすまで会わないと二人で決めたのだ。だべっているのは楽しい。でも何かやることやってないんじゃないかな、私たち。あと一つなのだ。手元にあろうとなかろうとやり遂げるのだが、無用に親を驚かせたくはない。

今までは決まった時間に通勤するサラリーマンをばかにしていた。押し合いへし合いして混んだ電車に揺られるのは嫌だった。でも先に人込みに入った夜唯子の言っていたとおり、大勢を見てから自分のこれからを考えることだってある。二人で作った時間で新しいものをつくる。果たし状の最後の文の意味だ。