碧井 ゆきの物語

こんにちは。碧井ゆきと申します。ここにはわたしが書いた小説をのせています。

果たし状3

夜唯子とはいろいろなことをやった。チューブややわらかいポリエチレン製の容器に入ったものを凍らせたり、それに飽きるとゼリーを詰めたりした。凍らせて遊んで一番印象に残っているのはバルーンアート用の長い風船に水を入れたときだ。長い風船のかたい口をなんとか開いて蛇口にかぶせる。

空気を追い出すためにわずかに隙を空け、水の勢いに注意を払う。メインの作業はみんな夜唯子だ。風船の先がふくらんで、まわりの空気と場を入れ替えるように三分の一、半分、と水が満たされていく。口を縛る余裕を残して夜唯子は蛇口から風船を外した。

水が入った長い風船はそれだけでじゅうぶんおもしろかったが、 夜唯子は納得がいかない様子を見せると、突然風船の中ほどをねじった。愛会梨は驚いて目を見開く。 「お」 風船は張りを持ちねじったところを持っている夜唯子の手からしなる。夜唯子は空いているほうの手でまた風船をねじる。

「ひゃあ」 風船の長さの四分の一ほどにふたたび砂時計のような細いくびれができる。愛会梨の悲鳴などお構いなく、夜唯子は指示を出す。「真ん中持って」次に起こることの予想を脳が止める。風船の中央のねじれが解けないように気をつけながら夜唯子の手から受け取る。