碧井 ゆき の物語

こんにちは。碧井ゆきと申します。ここにはわたしが書いた小説をのせています。twitter.com/snowycrow2blue https://note.mu/snowycrow2blue

彩夏夜160505

「櫂子だって同じようなことしてるじゃない」

「ちがうわよ」

櫂子は気持ち悪いぐらい落ち着いた目でこちらを見る。

「約束してるもの。いつかの」

櫂子は今日はアイスのカフェオレを飲んでいる。

「私は、終わったらご破算よ」

「好きなんだね、刻生くんのこと」

何を今さら言っているのだろう。

 

「櫂子は山場さんのことを好きだから頑張っているんでしょう」

櫂子はアイスカフェオレの入ったグラスを両手でつかみ、体から離すように私の方に追いやる。

「どうなのかな」

目は伏せているが悪びれてはいない。

「苦労はないよ」

どうしてそんなに透明な目をしているのだろう。

 

「武端さんも好きなんだけど」

櫂子はようやく言い淀む。

「山場さんには好きという言葉が使えないの。使っても空虚。ひとごとみたいになる」

櫂子は再びグラスを両手でつかみ引き寄せる。

「冗談にしかならないのよ」

櫂子の目が翳る。新しい彼を手離さない理由がわかった気がした。

 

「でもね、山場さんにはとんでもなく所有欲があるのよ」

私が飲んでいるライチオレンジのグラスにたくさんついた水滴はだらだらと流れていた。

「誰にも渡したくないのよね。ちょっとの寄り道をされても。武端さんは、美知さん以外には渡したくない」

櫂子の眉が上がる。

 

「武端さんのことになると感情が噴き出るのよ。おかしいよね」

これ以上考えさせるのは辛くさせそうだ。

私は何が辛いのだろう。

 

※この作品は小説投稿サイト「小説家になろう」http://syosetu.com/にも構成を変えて掲載しております。表現も一部修正しています(掲載日2016年10月6日)。