碧井 ゆき の物語

こんにちは。碧井ゆきと申します。ここにはわたしが書いた小説をのせています。twitter.com/snowycrow2blue https://note.mu/snowycrow2blue

彩夏夜160513-02

片目が真っ赤で気の毒だ。

ATMから5万円下ろす操作をする。

家族カードを持っていて、使える時はどんな場合でも使っていたが、近頃は使う回数が減っている。

山場には成田空港へ行ったことは話していない。

口の開いたATMの機械にお札が5枚並ぶ。

背中のずっと後ろの方の武端の存在を意識しながら長財布にお金を収める。

お札を見せてはいけない。

手が震える。財布のふたを閉じかけていったん手が止まるが、意志の力で閉じる。

音は立てられなかった。

振り返ると、武端は誰も使っていないATMのはしの機械を見ていた。

見ているものを考えていない黒目の大きな目だ。

「お待たせしました、すみません」

ATMコーナーにほかの客はいなくなっていた。

櫂子は財布をバッグに納めながら笑顔をつくる。

顔は武端に向けたが、目が動いてしまいまともに見られない。

武端は櫂子にのほうに一歩足を踏み出したが、再び斜め後ろに引き、壁際に戻った。

櫂子はよくわからない武端のステップに引かれるように歩み寄り前に立った。

出入り口からは三、四歩奥まっている。