碧井 ゆき の物語

こんにちは。碧井ゆきと申します。ここにはわたしが書いた小説をのせています。twitter.com/snowycrow2blue https://note.mu/snowycrow2blue

彩夏夜160530-02

武端は胸を押さえて腰を曲げ、激しく咳き込んだ。

「ちょっと待ってください」

苦しそうな咳が止まらず、玄武岩を模したタイルが敷き詰められているビル街の谷間のスペースを小さく右往左往する。

しゃがみ込みたそうだが人目が気になるのだろう。

上半身を前に倒して、出るものが出ない辛そうな咳をしながら、櫂子を振り返る。

「なんてことを」

がはっ、と大きな音の咳をして、ポケットからハンカチを取り出し口もとをぬぐう。

櫂子は黙って立っているしかなかった。

本音を言ってしまった。

本音が返ってくるのを待つしかない。

武端は突然方向を定めて歩き出した。

目の先にドリンクの自動販売機があるのがわかり、櫂子はスペースに植わっている木立に添うように設置されているほぼ立ったままの姿勢で浅く腰かけられるベンチに体を寄せ、追わずに待つ。

目をこするのが見える。