碧井 ゆき の物語

こんにちは。碧井ゆきと申します。ここにはわたしが書いた小説をのせています。twitter.com/snowycrow2blue https://note.mu/snowycrow2blue

彩夏夜160603

武端の名刺を受け取るとき、美知はすぐに手を引っこめなかった。

名刺の下で、美知の薬指と武端の人差し指が触れた。

震えていることがわかってしまったと思う。

恥ずかしかった。

武端も櫂子も大人の態度で落ち着いていた。

武端は慣れているのだろうし、櫂子は恐らく武端に何度か会っているのだろう。

それ以上の想像は苦しくなって美知は思考を止める。

武端は美知の元に来てくれるのだろうか。

櫂子は不倫のままでよかったのだろうか。

美知は嫌だった。

武端に自分でもつまらないと思う質問を重ねているうちに、櫂子は離れ、壁に掛けられた武端の写真を手を後ろに組み見ていた。

老獪にも見えたし、孤独にも見えた。

今日のことを拒否することもできたはずだ。

美知は武端の指先を思い出すたびに粟立つのを感じながら液晶画面に記事を書く。