2016-07-21 ロンサムカフェ -9- 「そんなことあったっけ」 「あったよ。覚えてないの? 主役が鍛冶原啓五で、ヒロインが蕗下冴子」 いくら考えても思い出せない。 当時つき合っていた彼と行った所や映画は思い出せるのだが、帆波と出かけた記憶は、大学近くのケーキ屋さんや、自転車を連ねて走ったイチョウ並木ばかりが出てくる。 「ほんとに私と行った?」 「やだなあ、女優さんがそっくりだったって言ったでしょう」 きっと一緒に観たのだろう。 とまどっているのに、帆波はいつからブルーのキャスケットをかぶるようになったのかが気になってきた。