碧井 ゆきの物語

こんにちは。碧井ゆきと申します。ここにはわたしが書いた小説をのせています。

ロンサムカフェ -9-

「そんなことあったっけ」

「あったよ。覚えてないの? 主役が鍛冶原啓五で、ヒロインが蕗下冴子」

いくら考えても思い出せない。

当時つき合っていた彼と行った所や映画は思い出せるのだが、帆波と出かけた記憶は、大学近くのケーキ屋さんや、自転車を連ねて走ったイチョウ並木ばかりが出てくる。

「ほんとに私と行った?」

「やだなあ、女優さんがそっくりだったって言ったでしょう」

きっと一緒に観たのだろう。

とまどっているのに、帆波はいつからブルーのキャスケットをかぶるようになったのかが気になってきた。