碧井 ゆきの物語

こんにちは。碧井ゆきと申します。ここにはわたしが書いた小説をのせています。

ロンサムカフェ -10-

二年ほど前からだったと思う。

「ごめんね、思い出せない」

「いいよいいよ。お互いいろいろ忙しかったよ」

クレープサンドが運ばれてくる。

クレープは厚みがあった。

きれいに丸められたクレープと生ハムの中から、黄緑色の葉先がとげとげした見かけのフリルレタスが主張しすぎない程度に飛び出している。

見ばえのバランスがよくて、すぐに食べるのがもったいなくしげしげと眺める。

帆波はこちらの様子に頓着する風もなく、サーモンとアボガドのクレープサンドをぱくついている。