出ないための鍵 11
少し寒気がしてきた。
彼女はハッとした顔になった。
「タオル、持ってきますね」
彼女はひざの上のチワワをソファの上に移して立ち上がり、廊下に小走りで出て行った。
真っ白でふかふかのバスタオル2枚と、フェイスタオルをたくさん両手で抱えきれないほど持って来た。
「そんなに。大丈夫ですよ」
彼女は手が動かせる状態ではなかったから、山積みになっているてっぺんのタオルを1枚取った。
それで、濡れているパンツの裾を絞るように水気を取った。
タオルの山をカーペットの上に置いた彼女は、ソファに座っている僕の前にしゃがみ込んで正座をし、僕が水気を絞っているほうと逆の裾を、別のタオルで水気を取ろうとする。
チワワがタオルの山をくんくんとにおいを嗅ぐ。
「いいですよ。大丈夫です」
彼女は口をぎゅっと結び、裾をタオルではさんで絞る。
髪で横顔がほとんど見えないが、なんだか一生懸命だ。
ノースリーブのドレスの袖口からのびる腕の温度が上がった気がした。