碧井 ゆきの物語

こんにちは。碧井ゆきと申します。ここにはわたしが書いた小説をのせています。

出ないための鍵 20 -最終話-

僕は、キーケースから僕のアパートの部屋の鍵をはずして、彼女に返してもらったキーホルダーにつけた。

キーケースに彼女の家の鍵をつけた。

 

「鍵、返しますね」

 

僕はまだ新しくて革のぴかぴかしているキーケースごと彼女に鍵を渡した。

 

彼女は泣きそうな顔をする。

 

「外に出られたじゃありませんか。キーケースは、差し上げます」

 

 

公園の出口から、彼女の家までは見える。

 

「家に入るところまで見ています」

 

彼女は、細い指でキーケースをぎゅっとつかむ。

 

「ありがとうございました」

 

 

タオルハンカチもあげたほうが良かっただろうか。

 

彼女は何度も振り返り、門柱の間に入った後にも手を振り、家の中に帰って行った。

 

-おわり-