碧井 ゆきの物語

こんにちは。碧井ゆきと申します。ここにはわたしが書いた小説をのせています。

出ないための鍵 18

鍵のありかは気になるが、黙っているのも息が詰まる。

 

「キーホルダーは、この間気づいていたんですけど、言いそびれてしまいました」

僕は頭を掻く。

 

「やっぱり、あなたのだったんですね」

 

驚けばいいのか、どうすればいいのか。

僕は彼女の顔を見る。

 

「あの日の夜からありましたから」

彼女は前を向いて歩く。

 

「タエコさんから聞いてなかったんですか」

 

責める口調にならないように気をつけて言う。

 

「言ったら、返さなくてはいけなくなると思ったのではないでしょうか」

 

彼女は口をつぐんでうつむく。

 

「映画に行くときも旅行に出たときも、持って行きました」

 

街灯と街灯の間だ。

 

顔色はうかがえない。

 

「ひとりきりと思うより、勇気が出たんです。ごめんなさい」

 

彼女は立ち止まって頭を下げた。

 

街灯の照らす範囲に入り、髪が光る。

 

「いや、いいんですよ。ただのキーホルダーですから」

 

顔を上げた彼女は、残念そうな面白くなさそうな表情のようだった。

 

「ただのじゃありません。ありがとうございました」

むっとした顔でキーホルダーを返された。

 

「鍵、探しましょう」