碧井 ゆきの物語

こんにちは。碧井ゆきと申します。ここにはわたしが書いた小説をのせています。

果たし状4

言うとおりにしないともっと恐ろしいことがことが起きそうだ。愛会梨にまんなかを託して空いた夜唯子の手が愛会梨の腕を越え、長くしなっているほうの中ほどにもっていった。そしてぎゅうっとねじった。 「ぎゃあ」 愛会梨は恐怖で手を離しそうになるが、今解けたら夜唯子が怒ると思う。

冷や汗が出てくる。 「スマホそばに置いておけばよかったあ」 夜唯子は悔しそうだ。力を込めなくてもねじれたままにできることがわかり、愛会梨は手と顔と肩から力を抜く。夜唯子も気づいて力を抜く。不意におなかの底から笑いがふつふつと沸いてくる。二人とも目の端に涙がたまる。

笑いを抑えていたら風船をつかんでいる手が震えてきた。震えながらがまんしているのがおかしくなってきた。愛会梨よりも必死になってがまんしている夜唯子を見るとますますおかしい。もうだめだ。一度力を抜いた真ん中をつかんでいる手に力が入ってしまう。 「ええっ」 夜唯子が叫ぶ。