碧井 ゆきの物語

こんにちは。碧井ゆきと申します。ここにはわたしが書いた小説をのせています。

ロンサムカフェ -11-

れいみはおいしそうに食べる帆波に釣られるようにクレープサンドをほお張る。

フリルレタスの尖った葉の刺激と、生ハムのしっとりした食感としょっぱさ。

とつぜん謙人の裸体が思い浮かぶ。

この場で思い出してしまう自分がおぞましい。

あわててうちけして、もぐもぐと噛む。

帆波も、口を閉じたあごを動かしている。

あの口の中でサーモンとアボカドが混ざり合っているのだろう。

 

生ハムとフリルレタスが混じり合わない。

噛んでも噛んでも生ハムは生ハムで、レタスはレタスだ。

もっと噛めば混じるのかもしれないが、そこまでくちゅくちゅと噛むと流動食みたいで気持ちが悪い。

それぞれが、それぞれの形と味を残しているところで、れいみはごくんと口の中のものを呑みこむ。