ロンサムカフェ -1-
「これで子どもができたら、帆波とは友達をやめないといけない?」
れいみは白いシーツを胸までたくし上げながら謙人を見る。
謙人は四角くて大きな尻を見せたまま黙ってシャワールームへ歩いていく。
俺が決めることじゃないということか。
そうだろうな、と思う。
でも言葉にせずにはいられなかった。
ハンドバッグの中で携帯がぶるぶる震える音がする。
サイレントモードにしていなかった。
途中よくもったものだ。
シーツを引きずったまま、シャワールームからの水音を聞きつつ携帯をバッグの中から取り出す。
やっぱり帆波からだった。
いつもメールが来るタイミングがぴったりなのだ。
邪魔と思うときには来ないし、寛いでいるときにも来ない。
〝今度の土曜日に、ランチに行かない?〟
毎回最小限の文だが少しずつちがう。
「日」があるのかないのか、読点があるのかないのか。
ですますも付いたり付かなかったりする。
フランクな語調に少し安心する。
〝行こ、行こ。渋谷で探しておくね〟
店を探すのはれいみのほうが得意だ。
帆波が選ぶ店には当たり外れがある。
※この作品は小説投稿サイト「小説家になろう」http://syosetu.com/にも掲載しております(掲載日2016年10月5日)。