碧井 ゆきの物語

こんにちは。碧井ゆきと申します。ここにはわたしが書いた小説をのせています。

ロンサムカフェ -2-

携帯の電源を切り、体の中のじんとしたものを感じながら、意外に罪悪感がないと自分を客観的に見ている。

シャワールームのドアが開く音がして携帯をバッグの中に慌ててしまう。

ドアはほんの少しだけ開いたまま止まっている。

謙人の肌色があるのがかろうじてわかるくらいのすき間だ。

体のほとんどを隠しきれていないのに引きずって歩いているシーツをまた引きずりながらベッドに戻る。

背中のほうでドアが大きく開く音がする。

ベッドの上にずっといたにしてはシーツは不自然にぐしゃぐしゃだ。

体にぐるっと巻くようにしてマットレスの上に転がり、壁のほうを向く。

 

こんな場なのに、頭の中は三割が帆波、二割が謙人で、残りの五割が同僚とのランチの風景だ。

どれだけ仕事が好きなんだと、ホテルの壁のクロスを焦点を定めないまま見ると、シーツで覆われた背中にあたたかい厚みがかぶさってくる。

肌にまだついている湯の湿り気がシーツを通して伝わる。

シーツと背中の間に大きな手が入ってくる。

そのままウエストをぐるりと回る。