碧井 ゆきの物語

こんにちは。碧井ゆきと申します。ここにはわたしが書いた小説をのせています。

ロンサムカフェ -18-

一人で産んで育てようと思ったのは、先輩がたの苦労している姿を見てきたからだ。

仕事を優先し、結婚するのは30代半ば。

すんなり子どもが授かるパターンは少数派で、30代半ばで結婚した女性の先輩たちの半分以上は婦人科へ通っている。

かえってロスなのではないかと思ったのだ。

借りているマンションの部屋は狭いけれど、買い物に便利な立地だし治安も心配ないし、上下の階には小さな子どもと暮らしている女性がいる。

実家も遠くない。

仕事も状況もちがうが、シングルマザーの友人がれいみにはいた。

 

会社の福利厚生は厚い。

社則を読み込むと、配偶者のいるいないには特に触れられていない。

先輩がたは一様に体力の衰えを嘆く。

出産後まもなく親の介護が始まった人もいる。

 

謙人に会ったとき、この人だと思った。

けれど帆波から奪う気は起こらなかった。